中小企業にとって、M&A(企業の合併・買収)は重要な成長戦略および出口戦略の一つです。企業経営者がM&Aを選択する理由は多岐にわたりますが、大きく分けて「オーナーの目的」と「会社の目的」に分類できます。本記事では、中小企業がM&Aを行う目的を詳しく解説し、その具体的なメリットやデメリット、成功のためのポイントを探ります。
オーナーの目的
ハッピーリタイア
M&Aを通じて株式を譲渡することで、経営者はまとまった資金を得てハッピーリタイアを実現できます。この資金を元に悠々自適な生活を送ることができるほか、新たなビジネスチャンスを探る余裕も生まれます。特に家族や健康を優先したいと考える経営者にとっては、非常に魅力的な選択肢です。また、ハッピーリタイアを選択した経営者が、後にアドバイザーやエンジェル投資家として新たなステージで活躍する例も増えています。
ポイント:
- ・価値最大化:
- 適切なタイミングで売却を行い、株式の価値を最大化するための準備を怠らないことが重要です。
- ・財務プランニング:
- リタイア後の生活設計を明確にし、必要な資金を確保することが大切です。
資金調達
不採算の事業を抱えているが、資金調達の目処が立てば黒字化できるケースでは、M&Aによって事業や会社を売却し、資金調達を行うことが検討されます。自社にとっては赤字事業であっても、他社にとって魅力的な事業である可能性があります。例えば、特定の技術や市場において競争優位を持つ事業であれば、買い手にとっては戦略的に価値が高いと判断されることがあります。買い手が見つかれば売却金が残り、他の事業に資金を充てることができ、企業全体の健全化を図ることができます。
ポイント:
- ・事業価値の明確化:
- 不採算事業の価値を正確に把握し、魅力をアピールすることが必要です。
- ・適切な買い手の選定:
- 事業価値を理解し、最大限に活用できる買い手を見つけることが重要です。
事業承継
経営者の高齢化や後継者不足が深刻な中、M&Aを通じて事業を承継する選択肢が増えています。特に地方の中小企業では事業継続が難しいケースが増加しています。親族内承継が困難な場合でも、外部の第三者に事業を引き継ぐことで、企業の存続や従業員の雇用を守ることができます。さらに、第三者に引き継ぐことで、新しい視点やスキルセットがもたらされ、企業の発展が期待できる場合もあります。これにより、企業の競争力が維持され、長期的な成長が可能となります。
ポイント:
- ・M&Aを含めた後継者の選定:
- 企業文化やビジョンを共有できる第三者を見つけることが重要です。
- ・継続的なサポート:
- 引き継ぎ後も一定期間サポートを続け、スムーズな移行を目指します。
IPOに代わる出口戦略
中小企業の中にはIPO(株式公開)を目指している企業も多いですが、IPOのハードルは非常に高いです。全国に約350万社の中小企業が存在する中で、2020年の新規上場企業数は103社に過ぎません。これほど高い壁を前にして、多くの企業が代替戦略を模索しています。そこで注目されるのがM&Aです。大手企業の傘下に入ることで、資金力や技術力を得るだけでなく、経営の安定性が向上し、より大きな市場での展開が可能となります。また、M&Aにより新たなネットワークや販路が確保されることも少なくありません。
ポイント:
- ・戦略的パートナーの選定:
- 自社の強みを活かし、成長を加速できるパートナーを選ぶことが重要です。
- ・徹底した準備:
- 事業計画や財務情報を整備し、IPOに準ずるレベルの透明性を持つことが成功の鍵です。
売り手会社の目的
技術・ノウハウの承継
他社が独自に保有する技術やノウハウを取得するためにM&Aが行われます。これにより、製品開発のスピードを加速させ、新たな価値提供が可能になります。例えば、新薬の開発や先端技術の導入において、他社の技術を取り込むことで、自社の研究開発力を一気に高めることができます。また、特許や知的財産権の獲得も重要なポイントであり、これにより競争優位を確立することができます。
ポイント:
- 技術の評価:
- 他社の技術やノウハウの価値を正確に評価し、適切な価格設定を行うことが重要です。
- スムーズな移行:
- 技術移転のプロセスを明確にし、迅速かつ確実に進めるための計画を立てることが必要です。
経営の効率化
競合他社や同業者同士が統合することで、重複する部門や機能を統合し、経営の効率化が図れます。これにより、経営資源を最適に配分することで、企業の競争力強化につながります。具体的には、サプライチェーンの最適化や、生産コストの削減、マーケティング活動の効率化などが挙げられます。こうした効率化により、企業全体のパフォーマンスが向上し、市場での競争力が高まります。
ポイント:
- シナジー効果の追求:
- 統合によるシナジー効果を最大限に引き出すための戦略を練ることが重要です。
- 組織再編の計画:
- 統合後の組織構造を明確にし、効率的な運営を実現するための具体的な計画を立てます。
雇用維持
事業を清算(廃業)すると、これまで尽くしてくれた従業員の生活を守ることができません。M&Aにより事業を継続することで、従業員の雇用を維持することが可能です。特に地方企業では、地域社会における雇用の維持が重要な課題となっています。事業が継続することで、従業員の家族や地域経済にも良い影響を与えることができます。さらに、新たな親会社のもとでキャリアの幅が広がり、従業員のモチベーション向上にもつながります。
ポイント:
- 従業員への説明:
- M&Aの背景やメリットを従業員に対して丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。
- 新たなキャリアの提供:
- 統合後のキャリアパスを明確にし、従業員が新たな環境で活躍できる機会を提供します。
財務改善
経営が厳しい企業が事業や資産を売却することで、財務状況を改善する場合があります。これは一時的な資金調達だけでなく、企業再生の一環として行われます。例えば、負債の返済や運転資金の確保、新規事業への投資など、企業の健全化を目指すための戦略的な資金利用が可能となります。また、資金調達により、経営基盤が強化され、より安定した経営が可能となります。
ポイント:
- 財務状況の把握:
- 企業の財務状況を正確に把握し、売却対象の評価を行います。
- 長期的な視点:
- 一時的な資金調達だけでなく、長期的な財務改善を目指す計画を立てることが重要です。
資金調達
新たな事業展開や大規模な設備投資など、大きな資金を必要とする場合、自社の一部または全体を売却して資金を調達します。この方法は金融機関からの借入れに比べて柔軟性が高く、資金調達の一つの選択肢となります。例えば、研究開発のための施設拡充や、生産ラインの増強、新市場への参入など、資金調達により企業の成長戦略が加速されます。また、資金を得ることで、事業リスクの分散や財務の健全化も期待できます。
ポイント:
- 事業計画の明確化:
- 資金調達の目的を明確にし、具体的な事業計画を立てることが重要です。
- 適切な売却先の選定:
- 事業の成長をサポートできる適切な売却先を選定することが必要です。
事業の成長・拡大
事業領域を拡大し、新たな市場に進出するための手段としてM&Aが用いられます。相手企業のシェアや顧客基盤、ブランド力を活用し、成長、拡大を目指します。例えば、新規市場への迅速な参入や、既存市場でのシェア拡大が実現します。また、異なる強みを持つ企業が統合することで、シナジー効果が生まれ、企業全体の競争力が強化されます。これにより、業界内でのプレゼンスが高まり、市場でのポジションが強固になります。
ポイント:
- 市場分析:
- 進出先の市場を綿密に分析し、適切な戦略を立てることが重要です。
- シナジー効果の活用:
- 統合によるシナジー効果を最大限に活用し、成長を加速させるための計画を立てます。
取引先維持
自社がなくなることで、取引先にも影響が出ます。長年の取引先に迷惑をかけないためにも、M&Aを通じて事業を継続することが重要です。特にサプライチェーンの一環として重要な役割を果たす企業が消滅すると、関連する企業にも大きな影響が及びます。M&Aにより事業を継続することで、取引先との関係を維持し、信頼関係を保つことができます。
ポイント:
- 取引先とのコミュニケーション:
- M&Aの計画を取引先に説明し、影響を最小限に抑えるための対策を講じます。
- 契約の再確認:
- 取引先との契約を再確認し、M&A後の関係を円滑に継続するための準備を行います。
4. まとめ
中小企業にとってM&Aは、成長戦略だけでなく、経営者の引退や事業承継の手段としても非常に有効です。オーナーと会社の双方にとっての目的を明確にし、適切な相手を見つけることが成功の鍵となります。M&Aのプロセスを理解し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、企業の未来を切り拓くことができるでしょう。
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2024年7月17日